【ヌシか。ラウドを殺すと言っている者は……】

「テメエが外に出てくるとはな」

その魔族の腰のあたりからは、尻尾のようなものがゆらめいていた。
太くてフワリとした、狐の尾。
華奢な身の丈に合わぬ大きな白い衣服、長い前髪はその魔族の目を覆い隠している。

「禁断のエリアからは決して出てこなかったテメエが、なんで今頃……。妖狐(ようこ)よ!!」

やって来たのは、この森で唯一の常識を打ち立てた伝説の魔族。
強者の森の誰もが恐れる禁断のエリアの主、妖狐だった。

【その言葉が本物かどうか興味があってな】

ディナスをも上回る程の絶大な、そして寒気がする程の禍々しい魔力が一面を覆う。

【もし本物でなければ……】

「どうだってんだ?」

そして妖狐は微笑む。
冷たく、妖しく、妖艶に。

【本物でなければ……静かに消してやろう】