炎駒が炎化を解き、ゆっくりと星牙のもとへと歩く。
しかし炎駒は星牙の前で立ち止まる事はなく、そのまま星牙の横を素通りして出ていってしまった。

炎駒が星牙の横を通りすぎるとき、一言だけ残していった。

「すまん……」

星牙はそのときの、やるせなさそうに自分を責める炎駒の顔が目に焼き付いている。
炎駒の一言からその意志の重さを感じ、星牙は引き留めることも、言葉をかける事も出来なかった。

星牙には聞こえたのだ。
炎駒の心の声が。

‘星牙の傍で平和の国を……夢を手伝えなくて……すまん’

「炎駒……水黎……、私が不甲斐ないばっかりに、弟達を守れなかった……すまない!」

星牙は膝を落として涙を流した。
その想いは青據も、索冥も同じだった。

「星牙。炎駒が戻って来られるような国を作り上げよう。そうすれば水黎も笑ってくれるさ」

「そうち。水黎はお前が下を向く事は望んでないちから。水黎のためにも、炎駒のためにも、理想とする国を……平和の国を造るんだ」

「索冥、青據……。わかった。四麒麟が揃うフロティアはそれからだ」

炎駒はそれから再び魔界を渡り歩き、やがて魔獣の森に辿り着く。
自らの過ちで仲間の元を離れたった一魔になった炎駒は、八十年戦争に敗れ全てを失いたった一魔になったラウドに、自分の姿を重ねていたのかもしれない。

星牙らはそれまで以上に国中を奔走し、フロティアの土台をしっかりと作り上げる。
そして今、フロティアという国を魔界の魔族全てがこう呼ぶようになっている。


‘平和の国’と……