夜には、高台に炎駒が訪れてきた。
炎駒は最近、毎日のように高台に来てラウドと話をする。
森の事、国の事など、かつてグレイドの幹部だった二魔は互いの考え方を理解出来、何を話すにしても頷き、意見を言い、笑いながら話をしていた。
そんなとき、突拍子もない話題を炎駒が振る。

「そういやあお前、妖狐が好きなんだってな」

「いやあ、そう……!?な、な、なな!?」

ラウドは言葉にならない程の動揺を見せる。

「こりゃあ、ジードにもわかるわなあ……。お前が妖狐を好きな事はもうわかった」

炎駒は笑いをこらえながら更なる追い打ちをかける。

「そ、それは……ルークには言うなよ!?あいつに言ったら森中に知れ渡るからな!第一、ルークは妖狐を男だと思っている」

炎駒は高台から森を眺めた。

「あんな綺麗な女いねえってのによ。まさかお前の親友のルークも知らねえ事を俺が知ってるのは悪いと思ってな」

「お、思って……?」

「ここに来る前に全部教えてやった」

「ば、バカな事を!あいつは私をからかうのが生き甲斐みたいなヤツだぞ!」

ラウドは焦りの声を上げ、いそいそと出掛ける準備をし始めた。

「炎駒、私はしばらくここを留守にする!お前、何だったらここにしばらく住んでいいぞ!」

そのとき、一陣の風が吹いた。

「ラっウっドちゃあん♪」

「お、二時間ぶりだな、ルーク」

「……!」

ラウドの苦難は続く。