「それでも俺には、オメエの底力がとんでもねえって記憶しかないけどな」

「いや、あのとき……ふっ、過去の話だ。しかし、あのロイドの魔力とジードの魔力がもしも同じだとしたら……ロイドは……」

「そうか!魔穿義団がロイドを狙ってんのはバルザの私怨じゃなく……。もしそうだとしたらどうすんだラウド?魔界の危機ってのは現実味を帯びてきたぜ。オメエ、また表舞台に立つのか?」

「……わからん」

「そうなったら、オメエはジードを殺す事になるかもしれねえんだぞ?」

ジードとロイドの白い光の魔力。
そして魔穿義団がロイドを狙っている事。
この二つから導きだされる答えはただひとつ。

ロジの王、ロイド・ジェシックは、セクド・エルナークであるという事……!

「魔穿義団は、ロイドがセクドである事に確信を持っているのだろうな。だとしたら、いずれジードの事にも気付くか?いや、それよりもロイドは魔神の力を暴走させた事などないのではないか?その可能性を探った方が良いのかもしれない……」

「まあ落ち着けやラウド。ジードは自分の運命を変えるためにアバルに行ったんだろ?ならよお、あいつが帰ってくるまでは動かねえ!それがあいつを信じるって事だろうよ」

デグタスのこの言葉を聞いて、ラウドはハッとした顔をする。

「そうだったな。私はジードを信じる。どうも息子の事となると、動揺していかん」

「親バカだからな、オメエは」

デグタスは豪快に笑い飛ばした。
デグタスは使命に基づき、ラウドが少年の頃から側にいる、ラウドの事を深く知る数少ない魔族だ。
臆病者と言われた過去も見ている。
そんなデグタスの前では、森の王たる姿を忘れるくらいラウドも彼を心底信頼していた。