魔界動乱期

麓でセレナがホルンを追い回している頃、ジードは山脈を登り始め、ふとある事を思い出す。

「あ、そうだ。念交信種(ねんこうしんしゅ)。すっかり忘れてた」

念交信種とは、魔獣の森を出る前にラウドがジードに渡した物である。
この種を口に含め、話したい相手の顔と名前を心に浮かべると、その相手と念交信が出来るアイテムだ。

「早速明日の昼にでも試してみるかな」

山脈の途中で、ジードは睡眠をとる事にした。
まだまだ頂上は見えそうにない。
暗く、足場の悪いこの場所は昼間に登るべきだと判断したのである。
そして翌日。
山脈の頂上にジードが立ったのは正午よりも早かった。

「おお、見渡す限りの緑色だな。よし、親父に交信してみっか……えと、ラウド……」

そのとき、魔獣の森の高台にはデグタスが訪れていた。

「ん?……おお、ジードか!全く交信をよこさないから心配したぞ!」

「はは、悪い悪い。色々あってさ。何から話せばいいかな……」

ジードはアバルに入ってから今までの事を事細かにラウドに話した。
そしてそれによるジードの心境の変化も。

「俺のしてる事、仲間達はどう思うかな……」

きっとラウドならこうするはずだ。
そう思って行動してきたジードだが、不安はあった。
森の仲間達に対する裏切りと取られてしまう行為でもあるからだ。

「私からお前に言える事はひとつだ。……息子の行動を、父は誇りに思う。森の仲間は、そういうお前に惹かれたんだ。自信を持って行動しろ」

ジードは満面の笑みを浮かべ、交信を終えた。

「ジードからの交信か?……オメエのそんなホクホクした顔見るの初めてだぜ。これが親バカってやつか」