魔界動乱期

「親父は言ったよ。アバルを変えてこい、と。でもまずそれは、俺が変わらないといけなかったんだ」

ジードの心に迷いは消えていた。
そんなジードを見て、セレナは絞り出すような小さな声で口を開いた。

「私は……ダークエルフなんだ」

「ダークエルフ?」

ジードはダークエルフの事を知らなかったが、それでもセレナはこの後の言葉をつぐんだ。
話をすれば、ジードにも差別的な目で見られるかもしれない。

「ダークエルフは、全ての魔族から忌み嫌われた種族なのさ」

しかしセレナは全てを話した。
わかってはいたことだが、ジードが自らの口で魔獣の森の魔族だと、ラウドの息子だと教えてくれた事で、自分だけ隠し事をしているのに一種の罪悪感を感じたのだ。

「ダークエルフの私は五歳で属性に目覚めた。皆、悪魔の子だと恐れ、近づかなくなったよ」

「悪魔の子……。両親は……?」

「知らん。私の記憶の中に両親の存在はない」

‘悪魔の子’という言葉に、ジードの胸が締め付けられる。

「私はあの方の……ラウド様の言葉で救われたのだ。こんな私を受け入れてくれる国があるのだ、とな。だから私は強くなってギルシャス軍に加わる事を目標にした。だが、八十年戦争に勝利したのはロジだった」

「だからセレナはアバルに来たのか。親父の後を追って?」

「アバル様が、故ギルシャス王の意志を継ぐ魔族だと聞いたからさ。ラウド様がいたのは偶然だ。だから運命だと思ったよ。神様は私とラウド様を引き合わせてくれたのだと。しかし……運命とは残酷なものだと知った。まさか私が、ラウド様の敵となってしまうとはな」

「……。運命なんて変えられるさ。さあ、もう寝ろよ」

自分の呪われた宿命に照らし合わせて言ったのだろう。
ジードは自分の運命を切り開くために今ここにいるのだ。