「貴様、森の刺客か!」

ケルベロスが炎を放つ。
しかしジードの前で炎はブシュウ…と音を立ててかき消された。

「なんだ?何をした……?」

「ルークさんは滅多に魔法攻撃をしない。なぜだかわかるか?」

「俺のように属性を多く持たないからだろう?」

「ウルフは誇り高い魔族。自らの肉体が一番の武器だと考えているからだ。お前の牙は錆び付いている!今のお前はルークさんの足元にも及ばない!」

ジードが地を蹴る。
ケルベロスが見えたのは、それにより弾けた土のみ。

「ぐっ……ふっ……」

ルークを思わせる神速の動きで、ジードの拳がケルベロスの脇腹に突き刺さった。

「お前は森を出たときから何も変わらなかったんだろ?」

「があぁぁ!」

ケルベロスはその三つの頭を用い、ジードに食らいつく。
しかし何度アタックしてもジードの体は捉えられない。
しかしそれでも、絶え間なくケルベロスは攻撃を繰り返す。

しかし怒りで我を忘れたようなその攻撃は、ケルベロスの計算によるものであった。
やがてジードとケルベロスの位置が入れ替わったとき、ケルベロスは巨大な炎を吐いた。

それはジードを狙うというより、煙幕のような役割を果たすかのような攻撃である。
そしてケルベロスは、‘切り札’目掛けてその日最速と言って良い動きを見せた。
ケルベロスが向かっていったのは、倒れているセレナがいる場所。
そしてケルベロスはセレナの喉元に牙を突き立てた。

「小僧!少しでも動けばこの女の喉を噛み千切る!」