ジードの魔力を振り払うかのように、ケルベロスは反撃を開始した。
右の頭が氷を吐き、左の頭が炎を放ち、真ん中の頭は砂の礫を無数に撒き散らす。

「はあっ!」

ジードは氷の息をかわしながら、炎を炎で相殺し、着地すると同時に前面を岩でガードしながらケルベロスの方へ拳を握り込みながら飛び込んだ。

「小僧が!」

ケルベロスも素早い動きでかわすと、三つの頭から同時に氷の魔法を放った。
ジードは振り返りながら、両腕をクロスさせ魔力防御をする。

「バカか貴様!それしきの防御で三倍の魔法が防げるか!」

三対の氷の筋がジードを正面から捉えた。
絶対零度の衝撃がジードの体を蝕む。

「ぐうぅぅっ……おおお!」

ジードが両腕を広げると、パァンッと魔法が弾け飛ぶ。

「なな!?なんだと!……貴様、何者だ?アバル兵ではないのだろう?」

鎧を装備していないジードに、ケルベロスが訊ねる。

「ケルベロス、お前は仲間がやられてなんとも思わないのか?」

「俺の質問に答え……」

「ウルフは仲間を大切にする魔族だ。でもお前は違う」

「仲間だ?そんな甘い事を言ってたウルフがいたな。俺と同等の力を持ったこざかしいウルフが……」

「お前がここでただ殺しを楽しんでいる間、ルークさんは森のウルフ三千魔を率いる最強軍団のボスになった」

「あ……?なぜその名を知ってる、小僧?その衣服の匂い……ルークやラウド、森の魔獣達のもの?……なぜヒューズがあの森の匂いを?」