ホルンがバッと両手をサイクロプスに向けると、無数の木々の刃が一斉に標的へと伸びる。

「こざかしい!」

サイクロプスの大きな目は視野が広く、巨体とは思えぬ素早い動きで襲い来る木々を凪ぎ払う。

「ぬっ、たかが木の攻撃がなんと重い!」

魔力のこもった木々とサイクロプスの棍棒は、衝突するたびガシャアッと金属音のような音を繰り返す。
逃げるようにその場を飛び退いたサイクロプスに、逃げ場のない程の木々の槌が迫る。

「これほどの木をコントロール出来るとは……ならば!」

サイクロプスが息を吸い込むと、上半身の筋肉が異常な程隆起する。

「なんだ?」

次の瞬間。

「キシャアァァァァァァ!!!」

凄まじい音の衝撃。
細く、鋭く、高音の雄叫びは、ホルンの聴覚に打撃を与えた。
それだけではない。
襲い来る木々達も影響を受け、平衡感覚を失った木々の刃はことごとく的を外してしまった。

「うぅ……視界が、歪む……!」

音の衝撃はホルンの平衡感覚を奪い、視覚をも破壊する。
ホルンの目には、グニャグニャと歪んだ景色が展開された。
そのときホルンの視界を覆ったのは、赤く巨大なもの。
それはまぎれもなく、サイクロプスの体が目の前に迫っている事を意味していた。

「ま、まずい……一旦距離を……、な、なんだ!?」