サイクロプスがのそりのそりと近付く。
ホルンがようやく四つん這いに起き上がったとき、既にサイクロプスの棍棒は頭上から振り下ろされていた。

「死ねっ!」

グシャア、と鈍い音とともに、棍棒が地中深くめり込む。

「いい感触だったな。グッグッグ……、さてどうなっている?」

サイクロプスが棍棒を持ち上げて陥没した土中を覗いたとき、中から無数の木の幹がサイクロプスに向けて襲いかかった。

「うおっ!」

その場から後退したサイクロプスは、地中から這い出るホルンの姿を見て驚愕した。
棍棒の重みにサイクロプスのパワーを乗せて振り下ろした、驚異の破壊力の一撃。
サイクロプスの考えでは、ホルンは原型を留めないほどグシャグシャに潰されているはずであった。
仮にガードしたとしても、甚大なダメージを避けられるはずがない。

「ペッ!僕は土を食べる趣味はないんだけどねえ」

ホルンは隙だらけだったが、サイクロプスは警戒心を懐き、その場を動かないでいる。

「貴様、何をした?なぜ無事でいられる?」

「何をしたかって?はは、トリックがあったとしてそれを敵に教えると思う?と言っても別に、特別なことをしたわけじゃないからいいけど」

「何?」

「木ってさ、地中深くまで、そしてとても枝分かれして伸びているんだ」

「木の属性持ちか。……バカにするな!たかが木で俺の攻撃が防げるか!」

瞬間、ホルンが魔力を解放する。
それに呼応するように、木々達もざわめき始めた。

「風もないのに……木がゆらめいている?」

「バカにしてるのは君の方だよ」

「………」

「僕は木の命に魔力を乗せたんだ。何も通わない鉄屑が、命の宿る木々を壊せると思うな!」

静かなる魔族ホルンの、怒りの矛がサイクロプスの魔力を捉える。