ジードはクーリンに手渡された袋を見つつ、うなだれながら歩いていた。

「はあ、これでもかってくらい世話になっちまったなあ。そういや、ディナスが言ってたっけ」

‘後々アバルとはまた一戦やらかす可能性が高いんだ。下手にアバルのやつらと関わらない方がいいぞ。お前はいずれそいつらを裏切る事になるんだからな’

「だよなあ。もうこれからは気を付けた方がいいな」

二日ほど歩くと、ジードの視界を覆い尽くす程の、巨大な防壁が目に入った。
遠くからでも中の魔族の声が聞こえてくる。

「あれがオンタナか?す、すごいな……。フォルツさんの村とは比べ物にならないくらいでっけえ。魔族の気配も数えきれない程感じる」

ジードが近づくと、街の入口を守る国軍の姿が見えてきた。

「通行証は?」

「通行証?ああ、これを見せればいいのかな……」

ジードはフォルツに手渡された小さな鉄板を門番に見せた。

「こ、これは……!?し、失礼致しました!お通りください」

「あ、いいの?じゃあ入りますよ、と……」

入口を入ったところで、ジードは固まった。
魔族、魔族、魔族。
そして見たこともない巨大な建物がズラリと建ち並んでいる。
区画整備されたその道は、突き当たりが見えないほど奥へと続いていた。

「ね、ねえ」

「はい、何でしょう?」

「首都の方へ行くには、この道を真っ直ぐ行けばいいのかい?」

「はい。出口でまたその通行証をお見せください」

門番に説明されたジードは、ゆっくりと歩き出した。