「ジード、オンタナまでは距離があるわ。これ、持っていきなさい」

クーリンは何かが入った大きな袋をジードに手渡した。
その中からは、ほのかに良い香りが漂う。

「これは……、もしかして、食料?」

「料理を食べたときのあなたの顔が忘れられなくてね。また沢山作りすぎちゃったけど」

「あ、あの……ありがとう」

昨夜のうしろめたさに更に拍車がかかり、ジードはボソッとお礼を言う。

「あとな、これを持っていけ。大きな街に入る際は検問が厳しいからな」

フォルツは小さく金色の鉄板のような物をジードに手渡した。
その鉄板の真ん中には、アバルの紋章が記されている。

「これは?」

「通行証みたいなもんだ。大きな街は検問が厳しいからな。さあ、行ってこい!頑張れよジード!」

フォルツがジードの背中を力強く叩いた。
ジードは少し微笑んで、村を発っていった。

「俺の期待に応えてみせろよ、ジード」


その頃、魔獣の森のディナスのエリア―

ディナスは、少し前からある魔力を捉えていた。

「戻ってきていたか、‘放浪者’が。どうやらジードと接触したな。気を付けろよジード。あいつは何を考えてるかわからねえからな……」