魔界動乱期

スパニーボの森では、傷口を押さえ倒れ込む妖狐の姿があった。

【ラウドに苦しみを与えたのは我のせいだ……】

妖気はこの言葉を繰り返していた。

【ヤツを消す……ヤツらを消す……。我の前に立ち塞がる者は全て消す。感情を捨てよ。憎しみの感情すら邪魔になる】

妖狐は、次第に禍々しいオーラを発していく。

【……悪党は消すに限る】

妖狐はまるで自己催眠でもかけるかのように、‘消す'と言う言葉を呟き続ける。
次第に妖狐は過去の記憶を消し去っていく。

‘また殺すの?あなたがいなけ……’

ズアッ!

妖狐は空中に向かって真空を放った。
まるで少女の声を、心の中の存在をかき消すかのように。

気付くと妖狐は笑っていた。
冷たく、妖しく、妖艶な笑みを浮かべて。
夜も更け皆が寝静まった頃、妖狐は立ち上がり飛び立った。

リマでは、見張りの兵が国境に立っている。まだ暑い時期にも関わらず、恐ろしい程の寒気が警護兵の全身を貫いた。

「な、なんだ!?う……体が…あぶぉ……」

警護兵は迫り来る‘空圧'に飲み込まれ、姿を消した。
禍々しい強大な魔力がリマの門を潜る。妖狐は真っ直ぐにギドラスの魔力へと歩を進めた。