魔界動乱期

ラウドはエレナの亡骸を抱き締め、涙を流し続けた。
三十分、一時間……。

妖狐は黙ってラウドの背中を見ているしか出来ない。
終わりなき後悔の念が妖狐の体中を駆け巡る。
そしてラウドは、静かにエレナの亡骸を地面に横たえた。

「これをやったのはリマ……ギドラスだな……!」

リマの方角を見据えるラウドの目を見た妖狐は、ゾクリと寒いものを感じた。
ラウドは口からは血が滴(したた)り落ち、目からは血の涙を流していた。

ラウドはスクッと立ち上がる。

【ラウド、ヌシ……】

黙って歩き出すラウドの体からは、猛り狂う魔力が渦巻いていた。それは紛れもない憎悪。

【ラウド!行ってはならぬ!】

しかしもはや妖狐の声はラウドには届かない。
妖狐は、ラウドの前に回り……

ズブッ!

「よ、妖狐、何を……」

妖狐は自らの手を、自らの腹に突き刺した。

【ぐふっ、ラウド……行くなら我を殺してから行け……】

「妖狐、止めるな!」

ラウドが妖狐を振り払おうとすると、更に妖狐は深く傷を広げる。