【ラウド、ヌシは気付いておろう。このジードが魔神の生まれ変わりだという事に】

「妖狐!」

ラウドは、妖狐の言葉を遮るように大声を出した。

「親父、それをさっき、妖狐さんから聞いたのさ。でも親父知ってたのか、そのこと?」

「そうだったか。私は昔、妖狐が魔神の血肉を食らったという話を聞いたことがあったからな。お前の属性が妖狐と同じだったことから、ほぼ確信を得ていた」

「じゃあなんで俺を……」

【その話は後にせよ。我がこれから話す事は、もしかしたら童の運命を救う手立てとなるかもしれん】

「俺を救う?俺が俺のままでいられる方法があるってことかい?」

【あくまで我の推測だがな。それは、ヌシが‘ジード’と名乗ったときから考えていたことだ】

そして妖狐は自身の推測を話し出した。

【‘ジード’とは、古い言葉で‘三番目’を意味する】

「三番目だと?」

【ラウド、ヌシならもうこの時点である程度の仮説が立とう】

「神と魔族の連合軍に討たれた最初の魔神を、初代エルナークとするなら、生まれ変わりは‘二番目’なはず」

【うむ。本来ならば‘セクド・エルナーク’なはずだ。だが、なぜヌシは‘ジード’なのか】

「えっと、セクドが誰かに殺されたとか?」

【それが第一の推測。だがヌシを見ていると、その可能性は低いと思える】

「どういうことだい?」

「つまり、魔神は運命をコントロール出来るということか?」

【全てではないが、ある程度出来るのだろう。ラウドの元にジードを産み落としたのも、ラウドという強者がジードを守り、加えて強い魔族に育て上げるという計算があったはず。更には、生命の危機に瀕したときには魔神の血が目覚める。ゆえに、セクドが死んだという可能性は低い】