【む、そういえば、大事な事を言い忘れたな。ジードはラウドのいる高台へ戻ったのだよな。仕方ない。………伝えるために仕方なく、だ】

妖狐がやはり素直になりきれていないとき、この戦争は終結を迎える。

ネロとガイラが倒され、自分以外の主力を倒されたと知った第十副師団長のルガンダが、全軍退却を意味する赤い閃光弾を打ち上げたからだ。

そして勝ち名乗りを上げる、森の魔獣達の咆哮がそこかしこに響き渡る。

「ガイ!みんな!俺たちは勝ったぞ!!」

ルークも、勇敢な戦死を遂げたガイやウルフの仲間達に届くように、目一杯の雄叫びを上げた。
それと同時に、ジードが高台へ戻る。

「親父!勝ったんだな、俺達」

「ジード、無事だったか」

ジードとラウドは互いに勝利を喜び合い、ラウドは息子の無事を確認して強く抱き締めた。

「妖狐に助けられたのか?」

「ああ。そうらしい」

「そうか……」

「そういえばさあ」

「ん?」

「妖狐さんが親父の事、好きだってさ」

「ほう、それはまた……ブホッ!!ななな、何を……!」

いきなりの不意打ちで鼻水や唾を吐き出すラウド。
そしてジードはラウドの後方に視線をやりながら、

「あ、妖狐さんだ」

「何!?」

ラウドは必死に、顔に散乱した唾液を拭き取り、平静を装う。

「お、親父……わかりやす過ぎるぜ。こういうとこは見習わないでおこう。でもこれ、両想い決定的だな」

「……来ないではないか。ジード……まさか、親をからかったのか?」

ゴゴゴゴ……と高台が震える。

「い、いや!ちょっと確認事項を……」