魔界動乱期

戦争が始まる前から降っていた雨は強くなる一方で、今では激しく打ち付けるような大雨に変わっていた。

そして魔獣の森のある場所で、突如現れた魔獣によりアバル兵の多くが足止めをくらっていた。

「な、なんだこいつは!!うわっ、吸い込まれ……」

バクンッ、とアバル兵がその魔獣に飲み込まれると、更に大量のアバルが次々に魔獣の口の中に吸い込まれてゆく。

ここはイピリアの大沼。

降り続く大雨は、イピリアが目覚める前兆だったのだ。
アバル兵の目の前には、巨大で真っ黒なヤモリのような魔獣が‘食事’を始めている。

やがて、イピリアに飲み込まれたアバル兵がポポポポンと吐き出された。

「おい、大丈夫か!?」

「あ、ああ、何ともねえ。それどころか、傷が治ってる……?だが、魔力が……」

イピリアの食事とは、魔力なのである。
魔力を食された者はたちどころに傷が癒える。
イピリアは魔獣ではなく精霊で、大雨を降らせたり、上記のような能力があるが、自分から危害を加える事はない。
食われた魔力も、一日休めば回復する。

真っ黒だったイピリアの体は、大量の食事を進めるうちにやがて七色に輝き始めた。