ガイも当然、その魔族の魔力の大きさが、自分を優に上回る事に気付いている。

しかし、誇り高いウルフのプライドと、入口を任された責任感が、固まりかけた体を動かしたのである。

「よく動けたな、勇気あるウルフよ。名前を聞いておこうか」

「ウルフ軍の副リーダー、ガイだ!」

「ガイ、か…。覚えておこう。私は、アバル軍暗軍副隊長の‘ネロ'だ。君の勇気が、君の死を早める結果になる事が残念だ」

その余裕の態度は、ガイにとっては苛立ちを覚えるモノではなかった。
むしろ力の差を思えば当然。
ネロはガイを見下しているわけでも、油断しているわけでもない。

しかしこの絶望的とも言える状況が、死の淵に立ったガイの眠れる力を呼び覚ます。