戦いが間近に迫っている現在、大粒の雨が視界を覆っている。
ジードは瞑想に明け暮れていた。
そこへラウドが近づいて、ジードに話しかける。

「ジード、なかなかの集中だ」

「え、そうかい?」

「うむ。お前の成長速度は、他の者の数十倍だな。産まれてまだ十数年だというのに、もう立派にこの森の大戦力だよ」

魔力の上昇に関して、ジードは‘あの出来事'が関係していると確信していた。
それはディナスとの戦いを経て、爆発的に魔力が上昇した事だ。

「親父、俺は、俺の中には……」

「?」

「あ、いや…なんでもない」

「ジード……」

そのとき、はるか上空から森の外を注視していたウィドーが、ラウドに向かって叫んだ。

「ラウド様!アバル軍が攻めてきました!!数まではよく分かりませんが、かなりの軍勢です!」

その報を聞いたラウドはジードとウィドーに「離れろ!」と言って、高台に雷を落とした。

‘ドゴォン…!’

と森中に響き渡る落雷は、戦闘に備えよという合図である。
魔獣の森が一気にざわめきたつ。

魔獣の森のエリア外にも、森は広域にわたって広がっている。
森の外を見張っていたウルフ達にも、アバル軍の大軍が地響きを上げて近づいてくるのがわかった。

そして軍勢が視認出来たとき、見張りについていた約五百魔のウルフ達が、アバル軍に向かって一斉にカマイタチを放った。