ラウドは、迫り来る一大決戦を前に、またもや過去を振り返っていた。

戦争で親友を、そして守るべき君主ギルシャスを失った過去。
全てを失い死を選ぼうとしたときに、生への道を選択させたのは敵方の王、ロイド・ジェシックだったのだ。

当時、最強魔族と言われたラウド率いるギルシャス軍を打ち破り、今や魔王に最も近い男と言われているロイド。

彼は情に熱く、仲間想いで、何より国を愛している。
国民に愛を注ぎ、国民からも愛を注がれる。
ロジの強さは、まさしく国が一体となった愛の強さと言える。

もしもギルシャスより先にロイドと出会っていたら、自分は今ロジで命を懸けていたのではないか。

「ふっ、私の主はギルシャス様ただ一魔だ」

一瞬、あり得ない仮定を頭に浮かべたラウドはすぐにその考えを打ち消した。
そんな事を思ってしまう事すら、故ギルシャス王に対する反目だと考えたからだ。