「あの……」





声をかけても彼女は返事をしない、うつむいたままだ。


「あの!!」


今度は少し声を大きくした。


すると彼女はピクッと反応し、ゆっくり顔を上げた。


「ッ…………」


彼女の顔は、とても美しく自然につばをのんだ…


『貴方は……?』


そう言った彼女の声は、とってもか細く、今でも消えてしまいそうな声だった。


「俺は、山口 隼人(やまぐち はやと)って言います。貴方の名前は?」


『私は……すみません。分からないんです。』


分からない?今時自分の名前を分からない人なんているのだろうか?


「分からない?では、歳は?」


『すみません…』


…歳も分からないのか…


「では、何で此処にいるんですか?」


『ごめんなさい…分からないんです。何も…』


そういった彼女の言葉で、確信した…























彼女は、記憶喪失なのだと…