暗がりでも分かる、冬馬の勝ち誇った顔。


走ってきたせいで乱れる呼吸から放たれる白い息。


冷たい鼻の頭。



「やっぱりって何よ」


「言っただろ、俺が恋しくなってこの場所にくるって」


「そ、そんなの聞いてない」


「俺は言った」



……聞いてたよ。


ぜんぶ冬馬の言った通りだったよ。

あたしの体は冬馬なしじゃいられなくなってた。

冬馬以外の人の体温を受け付けられない体になってたよ。


あたしはゆっくり冬馬の隣に行き、一緒に桜の木の幹に寄りかかり花火を見上げた。


2人ともしばらく無言で花火を見上げていると



「なぁ」



とだけ言って冬馬が手を差し出した。


『手、繋いで』


小さい頃から数え切れないほど繋ぎあってきた。


でも今、あたしは今までに抱いたことのない感情で冬馬の手を握ろうとしている。