やだ、ない。
「何か忘れ物?」
「…はい。手袋忘れてきちゃったみたいです…」
熊田先輩は自分の手元とあたしの手元を見比べた。
「自分のじゃ未菜さんの手には大きすぎるしな」
先輩は珍しく手袋をしてきていた。
先輩の手元を見て、自分が手袋をしてきていないことに気付いたんだ。
もう、忘れないように用意しておいたのに…
走ってきて今は身体もぽかぽかしてて手も温かいけれど、きっとすぐに冷たくなってしまう。
気温だってこれからもっと下がっていく。
だからって家に引き返してる時間はないし…
『はっ、バカだな』
冬馬の声が聞こえてきそうだった。

