「さぶっ…!!」
昇降口を出ると、露出されてる肌を冷たい空気が容赦なく痛めつけてくる。
あたしはカバンからマフラーと手袋を取り出し装着し、
「お待たせ」と3年生用の昇降口から姿を現した熊田先輩と並んで歩き出す。
先輩と付き合い始めて数週間。
まだ恋人らしい行為はひとつもしてなくて、恋人同士というよりは先輩後輩な関係で落ち着いている。
すっかり風通しのよくなってしまった木々の道を校門に向かってく。
先輩のさっきの反応が気になってこっそり顔を窺うけれど、いつもと何ら変わりはない凛々しい表情をしていた。
良かった。もう気にしてないみたい。
安堵し人一人分あけたまま先輩の隣を無言で歩いていると
「未菜、さん」
先輩が遠慮がちに声を掛けてきた。

