その冷たい手、温めてあげる。



なんであんな真似…


怒りにも似た冬馬の瞳を思い出して胸が苦しくなる。


冬馬のことが分からなくなる。


あたしのこと暖房代わりとしか思ってないくせに…



「…未菜さん?」



教室の出来事を思い出しながら階段を下りていると、先輩の心配する声が振ってきた。



「あ、ごめんなさい」



あたしはぼうっとしていたことを謝り、笑顔を向ける。


掴んでいた腕はすでに離していた。



「…さっきの子、あのままで本当に良かったのかな?」


「冬馬ですか? いいんですよ。向こうが悪いんだし」



そうだ。冬馬が悪い。


もうあんなやつのことなんて考えないようにしよう。



「未菜さん…」