その冷たい手、温めてあげる。


「未菜さん!! 今の音、何かありましたっ!?」



慌てた様子で姿を現したのは熊田先輩だった。



「……未菜、さん?」



熊田先輩は目の前の状況に眉をしかめたけれど、あたしと目が合った瞬間、
その顔は戸惑うような、でも心配するような表情に変わった。



「先輩っ」



あたしはカバンを持ち冬馬から逃げるように走り出し、見た目にもわかるがっしりとした熊田先輩の腕にしがみ付いた。



「何でもないんです。…行きましょう」


「…えっ、でも…」


「いいですから」



何度か教室の中を窺う熊田先輩の腕を引き、その場をなんとか去ることができた。