先輩と学校の外で過ごすのはまだ数えるほど。
それも公園で少しお話ししてそのまま家まで送ってもらうっていうのがほとんど。
あたしはカバンから鏡を取り出して、変なところはないか髪や顔をチェックする。
「ずいぶん嬉しそうだね」
「まぁね」
「そんなにくまごろうがいいの?」
「あ、またその呼び方。…やめてよね。仮にもあたしの彼氏なんだから…ひゃっ」
髪をセットしていた手の手首を突然掴まれ体ごと持ち上げられるようにぐいっと引っ張り上げられる。
イスがガタンと倒れる。
――えっ…
気付くとあたしは、冬馬の胸の中にいた。

