その冷たい手、温めてあげる。



「あ、低体温王子はっけーん!!」



ほんの数週間前の事を思い出していると、突然のアキコの大声に我に返り、顔を上げる。


アキコが窓にへばりつく様に外に視線を向けていた。



「うっひゃー。ざっと見ただけで20人もの女子の熱い視線を集めちゃってるよ。

顔なんて半分も見えてないってのに。今日もモテモテねぇ」


「20人ってそれは言いすぎじゃないの?」



まぁ確かにモテはするけど。


でもみんな冬馬の低体温ぶりを知らないから、体温を奪われたことがないからそんな目で見られるんだ。


あの冷たい体をくっつけられたらみんな逃げてくはず。



「未菜は冬馬くんに慣れ過ぎててマヒしちゃってるけど、冬馬くんカッコイイって先輩からもすっごい人気なんだから」


「ふーん」


「ふーんってあんたねぇ、冬馬くん相当ラブレターとかもらってるはずよ? なのに全部無視してるだから。あんたその意味分かってる?」


「ただ面倒くさいだけじゃない?」


「ダメだ、こりゃ」



呆れたようにため息をはくアキコ。


そんなのあたしが知るわけないじゃない。


冬馬の恋愛事情なんて興味ないもの。


「ひゃーすごいわ」というアキコの言葉に少しだけチラリと窓の外に視線を向ける。


校舎に向かって歩いてくる冬馬の姿が目に入った。