タクシーに揺られること1時間。 見慣れた街並みはもうなく、完全に見知らぬ街並みが広がっていた。 「お客さん、もうすぐ隣の県ですけど。」 ミラー越しに運転手と目が合った。 運転手はなぜか顔を赤くしていた。 「……運転手さんの好きな場所に連れて行ってください。あ、なるべく県境に離れたところで。」 またアバウトな行き先を告げる。 別に行き場なんてどこでもいいんだ。 ただ、あの街から離れてくれれば……。 これで……よかったんだよね……?