「っ」 「すみません」 立ったままのあたしにぶつかってきた男の人の声で、我に返った。 とたんに現実に引き戻される。 ……どうしよう。 殺されないだろうか。 押し寄せてくる恐怖が心を蝕んでゆく。 「…っ」 それでも、行くしかない。 帰るしかないの。 だって。 あそこが、あたしの唯一の帰る場所。 決して逃げることは出来ないんだ。