「満があたしとずっと一緒にいるって約束で、行くことになった。」
短くなったタバコを、灰皿に捨てる。
「その約束通り、一緒にいた。砂浜で遊んだり、水をかけ合ったりした。満は疲れてたのに、あたしは休憩をとるのを嫌がった。」
涙声になった美結の手を、強く握った。
「海岸からちょっと離れてる所まで、満に連れてってお願いした。一度でいいからって…。満は運動神経が良かったから、安心してた。」
「満の足がつかない所まで来て、危ないから、戻ろうとした。その時、満の顔より高い波が襲って来た。あたしはバランス崩してうきわから落ちた。苦しくて、必死に…満の名前を呼んだ。」
ふと、今さっきの状況に少し似ていると思った。
「気を失う寸前、満があたしの名前を叫んでるのが聞こえた。次に目が覚めたときは、あたしは病院のベッドの上だった。」
「……」
「満がいないってすぐに気付いた。お母さんに聞いたら、何も返事なくて…死んだんだって、言われなくても分かってしまった」
満は…必死で美結を助けようとしたんだな。
「それからの記憶はちょっと曖昧で…はっきりとは覚えてないんだ」
涙をこらえてる美結が、弱々しく笑った。


