「海、着いたぞ」 「…え、うそッ」 窓の方に視線をやる美結は、やっぱり喜んでない。 「泳ぐの苦手っつったよな?」 「…うん」 「海入るときは、俺と一緒にしろ」 「え」 「何かあっても、すぐに助けられるだろ」 今さっきより、すこし表情が柔らかくなった。 「…ありがと」 「じゃ行くか」 「うんっ」 元気になったのか、声はいつも通りだった。