---けがれた人間。そんな意味を持つ名前を付けられた子供…可哀相な子。

 可哀相?

 そんな同情の言葉なんていらない。

 同情を掛けられたところで、私が余計に惨めに見えるだけ。

 ---捨てられて、両親がいない。両親が居なくて寂しくないの?

 寂しいなんて思ったことなんてない。

 そもそも、寂しいって何??悲しいって何??嬉しいって…何??

 私にはそれが分からない。笑ったこともない、泣いたこともない…

 私には感情というものが無いんだ。



 感情を持たない穢(けが)れた人形…



 それが私に付けられたらあだ名。

 名前は穢汝(えな)。苗字は高野(たかの)。

 高野は私が引き取られた孤児院のお父さんの苗字。

 私は…生まれてすぐの状態で孤児院“ひまわり”の前に捨てられていたという。名前の書かれた紙と一緒に…

 そりを聞かされたのは私に物心がついたとき。

 孤児院にはたくさんの子供達が居た。その中には私のことを本当の妹の様に慕ってくれていた人も居た…

 けど…私はその人にさえ、感情をむき出しにして喧嘩する事も、心の底から笑顔を見せることも出来なかった。

 どうすれば笑えるのか…
 どうすれば涙が出るのか…

 真剣に調べた事もあったけど…調べたところで、何を見ても何も感じられない私がそれらを実行する事は難しかった。

 周りの人の見様見真似で、何とか作り笑いぐらいなら出来るようになったけど、自分の感情を持たない者が、他人の感情を理解出来る訳もなく…それもあまり役には立たなかった…

 それどころか、私を慕ってくれていたお姉ちゃんがそんな私をみて泣いた…

 お姉ちゃんの事を思ってやった事だったけど、逆にそれがお姉ちゃんを傷つける事になってしまった。

 それなら一掃、誰とも関わらなければいい…

 関わらなければ誰も傷つく事がなくなる。なら私はもう誰とも、親しい関係を持つことはない…

 それが私の出した答えだった。

 私は一生、独りで生きていく…。



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 「ちょっと高野さん、邪魔なんだけど?!早くそこ退いてくれない??」