「ついでに、
お前のはおごるよ」



苗字に、さん付け。

それが今までの
呼び方だったのに。



〝お前〟という呼び方は

私と君の距離が縮まったことを
確かに感じさせた。



「…、じゃ行こうか」


君の友達が
苦笑いのような表情で
切り出した。




「ほら…、
なんでそっち歩くの?
危ないだろ」


特に理由もなく
車道側を歩いていた私を
叱るように、
さりげなく歩道側に
寄せて、自分が
車道側を歩きはじめる。



〝ありがとう〟


そういいたいのに、
唇が動かない。