君に伝えたいことがあるんだ

俺は、先輩を抱え、あまり人目につかないように帰り道を急いだ。

「この女の人、俺の部活の先輩で、酒泉ちはる。装飾科の二年」

「へぇ。あの女の科の先輩なんね。でも、この人あんまり見たことがないんだけど?」
吉田、するどい。先輩は、他の人から守られているかのように人前にはあまり出てこず、周りのやつらが囲んでいる。先輩の友達なんだろうが、あまりにもベッタリで、少しムカつく。
しかも、学校ではメガネをかけているから、なかなか雰囲気が違うためか、わかりにくい。

「あの、K高校の酒泉洋介さんの妹だよ」

俺は、禁句の名前を口にした。この名前を知らない人はいない。
有名だからな…。

「ぇえ!?」
「嘘だろ!!」

先輩の兄は、強いことで有名。ただそれを見せつけたりしないことでも、人気の秘密。
それが、悪くもよくも目立つ存在。