男子生徒は何かを察したのか、首の後ろに左手をあてポキポキと解すと振り返った。

今まで告られていただろうに、そんな表情は一切出しておらず呆れた眼差しを向けてきた。

「おちょくんのはやめろ。」

「まさか。」

そんなつもりは全くなく、むしろ微笑ましい気持ちで温かく見守ってたのに心外だ。



男子生徒―――西 虎之助―は左手をポケットに突っ込み、こちらに歩き出した。

「えっ・・・。」

恐らく話は途中だったんだろう。


不服と羞恥が入りまじった表情で置き去りにされる彼女が可哀想になり、視線を彼の後方に送ったが歩みを止める事なく、もうお終いと言わんばかりに手を軽く上げさよならと振った。



腹這いになって見てた私の隣に、頭の下に手を組んで寝転がった彼は昼寝モードに入っていた。

「あーあ。」

見向きもしない男子生徒に目を潤ませながら校舎の方に駆けてった残像を見ながら、どーしてこの男がモテるのか不思議でならなかった。


告白現場に居合わせたのは今日が初めてではない。

呼び止められれば立ち止まるものの、目の前の可愛らしい女の子に興味を示さず、相手が言い終える前に「無理」と一言冷たく言い放つ。

こんな男のどこがいいのだろう。

居合わせるたび思ってしまう。


告白する女子の気持ちは理解出来ないが、隣で寝息を立て始めた整った顔をチラ見し、そんな奴と日光浴するのも悪くないと思いながらウトウトと陽気な昼下りを満喫する事にした。