キミがいた夏~最後の約束~





「なんで最近海にこないの?」



橘先輩が私に問いかけてきたけど
私はそれに何も答えない



ただ先輩のフワフワしたチョコブラウンの髪を見て、触ってみたいな…


なんてやっぱそんなことを考えていた




「噂のこと?」



私はその言葉に反応してビクリと肩を揺らしていた



「気にしてるの?」




気にしている…?

そうじゃない…



「噂なんて一々気にしてたらキリないぞ?
俺だって、あることないこと散々言われてきたんだから」


何も言わない私にイライラした様子の橘先輩は
そう言ってその柔らかそうな髪をかきあげる




「ああいうのは、言いたいやつに言わせとけばいい…」


「違うんです」


「え…?」


「そうじゃないんです…」



橘先輩の目には疑問符のようなものが浮かんでいた



「嘘じゃないんです」




私は橘先輩を見ていられなくて目をそらす
まるで恐ろしいものを見た時のように汗がにじむ



先輩は私から視線ははずさず次の言葉を待っている