教室の中の人は、まばら
どうして橘先輩が?
その場にいた全員がそう思っただろう
少しの間、シンと静まりかえっていた
すると突然
「橘せんぱーい、こんなとこで何してるんですか~?」
そんな猫なで声が辺りに響く
そちらを見ると、春奈が先輩にまとわりつくように近づいていくところだった
「どいて」
先輩が私から目をそらさないままそう答えたことに、少しイラだったような顔を見せる春奈
「あれー?先輩、噂のことしらないんですかー?」
「は!?何なの!あいつ!」
それにすぐに綾香が反応して立ち上がろうとしたと同時だった
「どけよ!」
今まで聞いたことがないような荒々しい態度と声
先輩の動きがスローモーションのように目に写る
先輩は春奈に掴まれていた手を乱暴に振りほどくと、私のところに近づいてきた
そして
「ちょっと、来て」っと言って私の腕を掴んで歩き出した



