キミがいた夏~最後の約束~




━━━━……ザワザワ…‥

━━…‥ザワザワ…‥




いつもよりも少し騒がしい放課後



でもそんなことは気にせずに綾香と久美とでどこに寄り道するか話していた



「カラオケ行く?」


「私、カラオケ苦手だぁ…」


「美鈴、ほとんど歌わないよね~」


「じゃあさ、新しく出来たドーナツ屋さんいこ!」


「久美…太るよ…」


「う…嫌なことを…」



そんなことを話しているとザワメキは不意に大きな歓声となる



「なんか騒がしいね?」


「何かあったのかなぁ?」



そう言った綾香が突然驚いた顔をする



「綾香、どうしたの?」



私は不思議に思って綾香の顔を覗き込んだ


隣を見ると久美も同じ様な顔をしている


すると綾香は声を震わせながら


「あ…美鈴…うしろ…」


そして私と背中合わせの教室の扉を指差す



「うしろ…?」



私はその指先をたどってゆっくりと振り向いた






風に揺れる少しウェーブがかったチョコブラウンの髪



二重の大きな瞳が私を見つめている




教室の扉に寄りかかるように立っているその人




「た…ちばな…せん…ぱい…」