キミがいた夏~最後の約束~




私たちは加奈先輩が開けた扉からそっと顔を出すと
「お~いらっしゃい」っと
笑顔の橘先輩が出迎えてくれた


お店の中はチラホラとお客さんが入っていて、先輩は手伝っているようだ


制服の上からはエプロン、手には料理が乗ったお皿を持っている



「渚、あんた5限サボってこんなとこいたの?」


「まあな、
二人ともちょい忙しいから適当に座ってて?」


そう言って橘先輩は、加奈先輩と話しながら奥の席に行ってしまった



絵になる二人ってああいうことを言うのだろうか?


あの二人の周りだけがキラキラしていて、訳もなく胸がチクリとする



先輩は他のお客さんとも知り合いのようで色々な人と話をしている



女の人も多くて、先輩の腰の辺りに手を回していたり


先輩に腕を絡ませたりしていたが、先輩はそのどれも当たり前の様に受け入れていた



やっぱり住む世界が違うな、そんなことを思いながら
私たちは言われた通り、昨日座ったカウンターに腰をおろす



「先輩のエプロン姿萌える~」

言いながら綾香は初めての空間にキョロキョロソワソワ


っといっても私も同じようなものだった


昨日は初めて、しかも橘先輩に連れられ突然入ったこの空間を、じっくり見る余裕などまったくなかった



改めて周りを見てみると、所々にサーフィングッツや本、写真やトロフィーなどが飾られている