キミがいた夏~最後の約束~




「お待たせしました」


私たちの会話が途切れたのを見計らったように、店員さんが手際よく注文の品を置いて去っていく


辺りに漂う密かな香り


私はその香りに誘われるようにカフェ・ラテに口をつけた


「おいしい…」


苦いのが苦手で注文したミルクたっぷりのカフェ・ラテは
三池くんが進めてくれた通り美味しかったけれど
少し苦く感じるのは今の状況のせいかもしれない



「三池くんのお父さんはいつ…」



私はカフェ・ラテを飲んで一息つくと、聞きたかったことをそこまで聞いて言葉を濁した


『自殺』なんて言葉は口に出したくなかった


三池くんは私が何が言いたいのかすぐに理解したように、静かに頷いて見せた



「あんたを助けて1年後ぐらいだったかな」


そういった三池くんは窓の外に目をやる


「母さんが男作って出ていって…
父さん、体は鍛えてた…けど心は昔から本当に弱い人で…」



三池くんのお父さんのことは覚えていない


ただ、たくましい腕に引き上げられた記憶だけがおぼろ気に蘇った



「あの日はいつもより様子がおかしかった…朝から物に当たって部屋中かき回して…」


三池くんの綺麗な顔が微かに歪む



「それで妹が怪我をした…大した怪我をじゃなかったけど…またそれで相当、落ち込んで」



私は頷くこともせず、ただただその話を静かに聞いていた



「妹を別の部屋で寝かせてからリビングに戻った

そしたらベランダの仕切りの向こうに父さんが立ってて…」



そこまで言って三池君の言葉がとまったけれど


私も先を促すことはなかった


ただ悲しい…


三池くんの話を聞いていると


いつかの痛みが私の心をノックする




「俺はやめろなんて言わなかった」