私たちは少しの間、抱き合っていた


さっきまでは他のことで頭がいっぱいすぎてすっかり忘れていたけれど…


橘先輩は上半身裸(水着)なのだ


だから抱き合うと橘先輩の肌が頬に直接当たってあり得ないぐらいドキドキしている


ダメだ!


これ以上この状態耐えられない


そう思って先輩から体を引き剥がそうと…


しているけれどやっぱりガッチリ閉じ込められて出られない



「よかった…」


え?


橘先輩の口から予想もしない言葉が飛び出して頭を悩ます


「俺…この間、メチャメチャカッコ悪かったから…嫌われたかと思った」


そう言って私の頭のてっぺんに顔を埋める



この間…?



私は考えてもわかりそうもない内容に、思いきって質問することにした



「この間って…?」



すると橘先輩は言いにくそうに



「……美鈴が…家に帰るかどうか話し合ってた時…」


そう言って恥ずかしそうな声を出す


でもその言葉を聞いても疑問が湧くばかり



「全然カッコ悪くないよ?一生懸命考えてくれたのにどうしてカッコ悪いの?」


「だってさ…美鈴が苦しんでるのに俺、なーんもできねーもん…」



そう言ってまた私をギュッとする



「何もいらないよ」


「え?」


「橘先輩がいてくれたら何もいらない」



それは本心だった


もうこの人なしで生きていけるのかさえわからない


そのぐらい好きになってしまっていた



「う…そういうかわいいこと言う~~‥…」



そう言って橘先輩は私の顔を持ち上げて額にチュッと口付けした