キミがいた夏~最後の約束~





橘先輩が私を体から引き剥がし、私の瞳を覗き込むと、静かに口を開いた



「俺…いっぱい遊んできたけど…

好きになった人はあんまいなくて…っていうか…本気で好きとかあんま考えてなくて…」



橘先輩は不器用に、でも真剣に私に向かって話をしてくれた



「加奈のことは…ゴメン…あれはないわな…」



橘先輩の謝罪でさっきの出来事を思い出したけれど、すぐに頭の中で打ち消した


やだ…思い出したくない



「でもな…加奈と変な噂たってっけど、それはあくまで噂で…
俺たち普通に付き合ってた時期があった…」



付き合ってた…?


そんな新事実を聞かされても、結局は胸の痛みは同じ


嫉妬心は私の胸の中でグルグルと渦を巻く


私の知らない橘先輩が


誰かに触れて


誰かを抱き締めていたかと思うだけで胸がギリギリと締め付けられて痛い



「そんなこと…美鈴に今言ってどうってことじゃないけど…
今は俺にとって美鈴が一番大事だ…」



そして橘先輩はその一言を口にした









「でもごめんな…過去は消せない…」