え…誰?
私はその人をジッと見つめた
橘先輩とはまたタイプが違うけれど、かっこいいことには変わりない
一重の瞳と、目と耳にかかった少し伸びた黒髪が冷たい印象を受ける
一見、するとすごく細く見えるけれど、着痩せするタイプなのかもしれない…
ぶつかった鼻がそう言っていた
橘先輩と圧倒的に違うのはその彼がまとう雰囲気
橘先輩が誰をも寄せ付ける引力を発しているとしたら
彼はその真逆
圧倒的な斥力で誰も寄せ付けない瞳
その前髪の間からのぞく瞳に見られて、私は一瞬ぞくりとなる
そして彼は私を一瞥するとフイッと顔をそむけ出ていってしまった
何あれ?
いや、誰あれ?
え?泥棒?
そんなことを考えながらお店の中に入っていく
店内はピークを過ぎたこともあり、少し落ち着きを取り戻していた
カウンターに行こうとすると
綾香が勢いよく近づいて来て私の手を握った



