次の日…


私はまた家に戻って来ていた


そのまま鍵を開けてリビングに入って行く


不思議と怖くはなかった


昨日の小さなお父さんを見たからかもしれない


お父さんはリビングのソファーで眠っていた



「お父さん…」



お父さんは薄く目を開けて私を見ると、またすぐに目を閉じる



「お父さん…ここ…私の今住んでいるところの住所…」


私は机の上に住所の書かれたメモを置いた


お父さんは何も言わないけれど、きっと聞こえているだろう


そんなお父さんに私は声をかけた



「お父さん…」



今まで言いたくても言えなかったこと



「お父さんから二人も愛する人を奪ってごめんね…」



愛する人の死


私にとっての橘先輩のような存在


そんな人をお父さんは二度亡くしている


それは私が想像するに余りあることなのかも知れない



閉まっていくリビングのドアの隙間から


お父さんの目に一筋の涙が流れていたのが見えた気がした