そして先に口を開いたのは橘先輩だった


「でも…弟は…?」


私はその言葉を聞いてコクリと頷く


そして私は室内を見渡すと


私の後ろにハンガーで掛けられた制服を見つけて立ち上がろうとした


「…あっ…」


少しよろけそうになった私を綾香と橘先輩が近づき支えてくれる



「美鈴?どうしたの?何か取るの?」



綾香がそう訪ねてくれたので



「綾香…ごめん…制服のスカートのポケットから家の鍵を取ってくれる?」



綾香はわかったと言ってすぐに制服に近づき、ポケットから鍵を探り当てるとそれを私の掌にそっとのせてくれた



チリリーン━━━……‥‥



やっぱりこの音色はいつ聞いても安心する


私は鈴を見つめていた顔をあげてみんなを見ると
2つの鈴の少し赤みの差した方を指差して話した



「こっちの鈴…」



ゆらゆらと掌で転がる鈴を見ていると懐かしい思い出たちが脳裏を掠めていく



「お母さんが死ぬ間際まで握っていた鈴…」



橘先輩は私のその言葉を聞いて少し恥ずかしそうに視線をはずした


きっとあの日の帰り道のことを思い出したのだろう


そして私はもう一度、鈴を掌で転がし、まだ新しいもう一つの鈴を指差す


新しいといっても、もう一方よりは…っというだけでそれでもその鈴も年期が入っているのが伺えた



「こっちの鈴は…」



私は思い出していた…



「新しいお母さんから貰った鈴…」



あの日…



私に新しいお母さんが出来た日のことを…