「もしもし…」
『もしもし?ごめん、もう寝てた?』
「ううん、大丈夫」
さっき別れたところなのに電話だとまた新鮮に聞こえるのはなぜだろう?
「何か用だった?」
私がそんな質問をすると少し口ごもる橘先輩
『用ってわけじゃないけど……』
それ以上言わなくてもわかる、それは私が橘先輩から掛かってきた電話を取った時に感じたことの
答えと同じなのだろう
『明日、いよいよ終業式だな』
「そだね、そんであとは夏休み」
『おー、またどっか出掛けような』
「うん、楽しみにしてる」
『花火大会とかあるし』
花火大会かぁ…
どれぐらい行ってないだろう…
昔、家族で行ったっきり行ってないな
あの時は、お父さんがいてお母さんがいてたっちゃんと私…
『どした?』
「え?ううん…ずいぶん行ってないから行きたいな」
『うん、絶対連れてく』
そんな橘先輩の言葉を聞いていると、無意識に顔がほころんで心が暖かくなる
ササクレだった心にふんわりとした希望や安らぎが生まれる
しばらくそんな他愛のない会話を続けた