私が生まれたのは多くの兄弟姉妹の末っ子としてでした。

ママはヨーロッパ全土に名を轟かすマリア・テレジア。
名門ハプスブルグ家の実権はママにあったのです。

ハプスブルグ家は神聖ローマ皇帝の地位を保ち、
伝統と格式と誇りに満ちた家柄です。

ママは非常に勉強家で、法律にも経済にも文学にも、
深く通じていました。
多くの事柄について学ぶのが大好きで、
寝る間も惜しんで勉強していました。

一方で私は勉強が大嫌い。
だって、
私は生まれながらにハプスブルグ家の皇女。

勉強せずとも、もうどこかの王子に嫁いで、
悠々と過ごす、
その選択しか許されていないのは、幼い時から分かっていました。