クラスでぽつんと孤立している謎女、宮迫柚子と友達になってから一週間が経った。
「おはよ、柚子」
「…毎朝飽きないな。
おはよう」
とりあえず、胡散臭そうな目で挨拶を返してくれるくらいには仲良くなれた。
うん、ちょっとづつ前進してるぞ、オレ。
「今日は何読んでんの?」
「我が闘争」
「え、我が闘争てヒトラーが書いたやつ?
なんかヤバい本なんじゃないの?」
「ヒトラーを批判する者は、ヒトラーを知った上で批判すべきだ。
ヒトラーを知るにはヒトラーの著書を読めばいい。
何事もまずは知らねばならない」
…また小難しい話。
でも、わからないではないかな。
ヒトラーが虐殺をしてたのがいくら事実でも、事情を知らずに否定するのはバカの感想と同じってことか。
「ヒトラーを擁護している訳ではないぞ。
むしろ大嫌いだ」
「わかってるよ」
オレだって頭が悪いわけじゃない。
というのに、柚子は返事もしないでさっさと読書に戻ってしまった。
ちょっぴり切ない。

