次の日。
「おはよ、柚子」
昨日と同じように、朝一番で教室の隅っこの文学少女に声をかけてみた。
そしたら、
「気軽に下の名前で呼ぶなリア充」
機嫌の悪そうな返事の後に、
「…おはよう」
小さな声で、そう付け足された。
素直じゃないなー。
ま、面白いからいいんだけどね。
そのまま読書に戻るのかと思ったが、柚子はこっちを半眼で睨んだままオレの袖を引っぱった。
「おい」
「なにー?」
「勘違いされると困るから言っておくがね」
柚子はちょっと恥ずかしそうに先を続けた。
「私は、別に…共産党員とかじゃ、ないから」
「なんでそこで恥じらうかな!?」
可愛げなセリフが来ると思ったオレが馬鹿だったよ!
まぁ、いっか。
「またカラオケ行こーね」
「二度と行くか」
なんとなーく、この不思議で気難しい女の子を、もうオレの日常に取り込めた気がするからさ。

